医療機関において発生した未収金を放置することは、自院の経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。未収金が発生する理由は、医師法第１９条の応召義務（正当な理由なく診療を拒んではならない）と、昭和２４年の厚生労働省医務局長通知（医療費の不払いにより直ちに診療を拒むことができない）により、医療費を支払わない患者に対しても、医療サービスを提供せざるを得ない現状があるためです。

さらには、診療報酬改定による患者負担割合の増加、低所得者層の増加、診療内容への不満を原因とする治療費の未払いなどが未収金問題を深刻化させています。今回は未収金を可能な限り発生させないための予防措置として、一般的な対策をご紹介します。

１．保険証の確認
　医療保険の受給資格を持つことを確認するため、患者に保険証の提示を求めることは最も基本的な予防策です。初診時と定期通院患者の毎月最初の受診時に保険証の確認を行いながらも、患者が保険証の持参を忘れるなど、確認を怠ってしまうケースもあるかと思われます。
　こうした状況を含め、一定期間保険証の確認ができない場合は、医療費の全額をいったん支払っていただくことも検討しなければなりません。その際は、自院の未収金に対する姿勢をしっかりと明示すると共に、相談室や担当者が支払いの相談に応じることができる旨も告知しておきましょう。

２．医療費の事前公表・説明
　患者は医療サービスの提供を受けた後に医療費の総額を知らされるため、診療内容に対する医療費に納得がいかないなど、支払いを拒否するケースも見受けられます。予め一部負担金が特に高額となる検査項目や手術の一覧表等を作成し、事前に患者へ説明することも有効です。また、高額療養費制度を用いるなど、患者と医療機関の双方で医療費の支払方法を検討することにより、未収金発生の予防をすることができます。

３．クレジッドカード・デビットカードによる支払い方式の導入
　カードによる支払い方式の導入には、患者と医療機関の双方にメリットがあります。患者側のメリットには、現金を持ち合わせていなくても医療機関を受診できる、精算時の待ち時間を短縮できることなどが挙げられます。一方、医療機関側のメリットは、未収金の発生を抑えると共に、会計窓口の混雑を緩和する事ができます。

これらの方法に加えて、近年は医療ソーシャルワーカー（MSW）の働きにより、未収金に繋がる可能性のある患者の早期発見や発生防止のための予防策を行う病院が増えてきています。その一例（http://www.iryoken.co.jp/hospital/qa/view/id:563）をご紹介します。